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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第8章 洗ってあげる

裸の花菜と対照的に、伊月は服を脱いでいなかった。

なので黒い綿パンの裾(スソ)が濡れて、色が濃く変わっていた。

足元を向く花菜はその様子を見ている。

伊月のほうは濡れるズボンを気にかけることなく、彼女の背中を流し続けた。

ザー…

無言の時間がしばし経つ中、狭いバスルームの空気が温まっていく──。

「…フ、やっぱり狭いか…、二人で入ると」

沈黙を破ったのは伊月だった。


「そう だね。狭いや…」

「ここに座る? 向こう向きに」

シャワーを止めた伊月が花菜を浴槽にうながす。

正直なところ、花菜にとってはこの狭さが救いだった。

二人の距離が近いぶん、自分の裸をお兄ちゃんに見られなくてすむから──。


でも──

「…っ」

顔を上げた花菜は、近距離で伊月と目が合い思わず息を呑んだ。

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