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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第10章 兄妹だから
唇が重なると咄嗟に思っていた花菜は、横にそれた兄の顔を追って首を傾いだ。
「…欲情は、愛情とは違うの?」
「切り離して全く違うとは言いきれないさ。ただ…愛がない欲はあるし、欲のない愛もある」
「欲のない……愛。それって」
昨日お兄ちゃんがしてくれたキスのこと?
続こうとした言葉は、耳をかすめた吐息がくすぐったくて途切れた。
「…っ」
「今からするキスは──…どちらだろうね」
どちら…
どちらでも良いから欲しくなっただなんて、口が裂けても言えない。
「ん…」
花菜が嫌がる素振りを見せなかったから、二人の唇が合わさるのは順当だった。
まるで水滴を迎え入れる水溜まりの表膜のように、どちらからともなく吸い付いた。