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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第12章 かき乱す者

「何が目的で来たのかな」

「…俺はあの女に興味がある。
 あの女と──…それと、あんたにもな」

「……?」

仕方無しに問いかけてみれば、男は不可解な返事を寄こしてきた。

伊月は額の汗を拭いがてら、思わず出た苦笑いを隠すように顔に手を添える。

「あいにく僕に、男同士のシュミは無いんだ」

「ハっ、…俺もだ」

「なら──…僕たちのどこに、興味を?」

「とぼけるのかよ」

「とぼけてなんて、いないさ」

酒のせいで痛み始めた頭では、この困った来訪者への対処が思いつかない。

とりあえず彼にできた事は、近所迷惑にならないように声をひそめるだけだった。


すると相手の男も同じ配慮をしてくれたのか声色を低く変え、声量を落としてきた──。


「あんたら兄妹の関係は普通じゃない」


「…!」


「─…と、俺は勘ぐっている」


なんだって?


掌で隠した下で伊月の目つきが変わった。

それは驚いたわけでなく

逆に冷静さを取り戻して細まったのだ。


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