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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第12章 かき乱す者


伊月はゆっくりと手を降ろし

相手の瞳を暗闇に見すえた。


「……普通じゃあ、ない? とは」


感情を見せない中性的な声に、偽のそれとわかる笑み。

冷たいそれは…強い牽制を意味している。


「前置きも根拠もないままでは、それは単に君が思う "普通" とやらの押し付けだよ」

「そうだな……まだ、推測の段階だ」

「意外と素直だね」

「ここでハッタリを言う理由が無い」

すると相手も同じような冷笑を浮かべる。

まるでそれが、こういう場面での礼儀作法だとでも言うようだった。

制服を羽織った背中を電柱に預けたまま、余裕のある速度で彼は伊月に喋り続ける。

「──…だからこれから暴くつもりだ」

「……」

「あんたが隠そうとするならあの女から聞きだす。…もっとも、あいつが自覚しているとは思えないが」

「それは……」

「困るのか?」

「…っ」

年下ながらなんて男だ。

どこまで見抜いてのこの自信なのか…。それは伊月にも測りかねる。

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