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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第12章 かき乱す者


花菜はぺたんと畳に尻を付けて内股に座り、枕元で兄の顔を覗きこんだ。


「んー…?」

「…っ」


顔を近付けて…コツン、額をくっ付ける。

これは花菜自身が体調を崩した時に伊月にされる行為だった。

「…っ…花…菜」

「ん…あれ、…どうしよう、わかんない…」

「……」

「熱は…無いよね? たぶん……無いよね」

微動だにできず仰向けで静止する伊月に対して、彼女は額を付けたまま呑気に悩んでいる。

そう、それはとても無防備な

主人にじゃれつく飼い慣らされた犬のような、寝起きの伊月には刺激が強すぎる愛らしさだった。

ああ…このまま抱き締めて、ムサボリタイ

そんな欲が浮かんだに違いなく…

しかし彼女がこれほど無防備に振る舞うのは、伊月を兄と信じている証だから

「花菜、熱じゃないから平気だよ…」

だから伊月には何もできない。

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