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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第12章 かき乱す者
「じゃあ風邪かな」
「それも違うよ」
「そうなの?……あ、もしかして」
熱ではないとわかって額を離した花菜。
その瞬間、伊月からツンと香ったのは酒の匂いだった。
あまり嗅いだことのない匂い。正直なところ良い匂いとは言い難い。
そんな匂いが兄からするなんて初めてで意外であった。
「ごめん。少し だけ、もう少しで僕も起きるから」
「い、いーよ寝てて! わたしお水持ってくるね」
腰を上げた花菜は急いでキッチンに向かう。そして乾かしてあったガラスのコップを取って水を入れた。
しかし蛇口を勢いよく捻りすぎて大きく水が跳ね返る。
ピチャっ!
コップの曲面を滑った延長で飛んできた水が花菜の顔までを大胆に濡らし
彼女はびっくりしてすぐに水を止めた。
「……っ」
「どうした?」
「溢れちゃった、ハハ」
落ち着かないと……
改めて水を入れ直し、それを伊月のもとへ持って行った。