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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第12章 かき乱す者
「──…」
「…?」
意味ありげな沈黙に花菜が慌て始める。
少しずつ傾いていた彼女の首がちょうど45°ほど曲がっただろうか──
ふっと息を吐いた伊月が、眉を八の字にしてくしゃりと微笑んだ。
「──…それは勿論、一昨日の事だよ」
「あ…!」
「学校の男達に酷い事をされて──そりゃあ花菜の傷が癒えるわけはないさ。それでも少しは元気になれたのかなって」
「そっか、その事……」
「だからって無理をすることはないんだよ。今日も学校には僕が休みの連絡をいれておくから」
鞄の中にスマホがあるから取ってくれる?
そう言って伊月は手を出した。
部屋の隅に置いてある彼の荷物から言われた通りスマホを取り出した花菜は、それを持って兄の所に戻り
…そして、それを渡そうとして
『 ──…俺から逃げるな 』
……!
『 それから学校を休むなよ。わざわざここまで来てやるのは面倒だからな…… 』
渡そうとして前に出した手を、おもむろに引っ込めてしまった。