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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第12章 かき乱す者
背後では女生徒たちの悲鳴が起こる。
「なんで引っ張るんですかっ。もうすぐ授業が始まります」
「帰ろうとしていただろう」
「しっ…していませんよ」
「本当か?」
強引すぎる不破の歩調に精いっぱい合わせて駆け足の花菜が、無意味だと知りつつ抗議する。
もちろん不破には手を離すそぶりも無く
そんな彼の口からは不可解な言葉を返された。
「そもそもお前がここに来たのは授業を受けるためじゃない。…そうだろう」
「……!」
「俺に会いに来たはずだ」
「ちがっ…」
廊下の端にたどり着いて階段を下り始めた不破。
花菜より数段下で急に振り返った彼と、少しだけ目高が近付いた──。
「……違ったか?」
「──…。違います…」
「嘘、だろ」
「……ッ」
「俺が来いと言ったからお前は来た。…本当にそうじゃないと言い切れるのか」
「ホント、は」
「……」
「本当は…っ…先輩に会うため……です」
「なら…──教室に戻る必要はない」
彼のよみは的を射ていた。
花菜は正直に白状するほかなく、腹の立つ言い方にも頷かなければならない。
それから彼女は大人しく不破に従って階段を下りた。