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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第12章 かき乱す者
自分が " 正しくない " ことを知っていて、その上で──取り繕おうとしないんだ。
彼は自分を正当化しない。
だから彼は花菜と初めて会った時、彼女を否定したり馬鹿にしたりしなかったのだ。
そんな彼に怖いものなんて無いのだろう。
「…ひ…卑怯」
不破の背中を見下ろすにも疲れた花菜は、ストンとベッドの縁に腰を落とした。
口から出たのは深い溜め息。
「わたしは…っ…、あなたが嫌いです」
「──…」
「先輩のことを心から軽蔑します。わたしにした事も…タバコも万引きも……全部、全部…っ、許せない」
グッと奥歯を噛みしめ、花菜は不破への気持ちを吐き出した。
そこには怒りがあった。
憎しみさえ込めた。しかし不破には…
「必要ない」
「……っ」
「お前の許しとか…必要ない」
花菜の気持ちなど、不破には関係ないことだった。
《 そうやっていちいち怯えるくらいなら…俺を警察に突き出せばいい 》
昨日の言葉が証明している。彼は許しを欲していない。
罰から逃げようとも思っていない。
そんな彼にたとえ罵倒を浴びせたところで痛くも痒くも無いのだから。