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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第14章 飽きられるまで
ボタンも留めずにそのままだから、目のやり場に困ってしまう。
「…帰るか」
花菜が立ち上がるのを見届けて、彼は右手の本を閉じた。
ゆるゆるのポケットに押し込むと、文庫サイズの小さな本は辛うじてそこに収まった。
「鞄を持てよ」
「はい、──…あ、いけない」
そこで花菜ははたと何かを思い直し、足下に散らばっているゴミを集め始めた。
ゴミ──それは、不破が捨てた菓子の袋と煙草の吸い殻、そして使用済みのコンドーム…。
コンビニの袋を取り出して、それらを残さず拾っていった。
「放っておけと…何度目だ? これを言うのは」
「……何度言われたって拾います」
まだ、まだ
ここまで堕ちてしまった今も、慣れないことはあるらしい…。
捨てきれない羞恥心は当たり前のようにあるのだ。
こんな生活が続いてから、少しづつだが…不破という男のことを知っていく花菜。
くだらないこともいくらか知った。例えば、彼は意外にも甘い菓子を好んで食べた。
昼食は決まって甘めの菓子パンを二つ。美味しそうに食べるわけではないけれど、飽きもせず毎日だから好きに違いないだろう。
この厚みのある引き締まった肉体はどこから授かってきたのかとよくよく不思議に思ったものだ。