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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第14章 飽きられるまで

彼は自分で自分をアピールしないが、同時に隠そうともしない。

だから花菜が投げかける質問には面倒臭そうにしながらもそれなりに答えてくれる。

…と言えど、彼に関して花菜が何か口出したところで十中八九 聞く耳を持たない。

「煙草は身体に悪いからやめたほうがいい」と伝えた時だって……「知っている」と返されただけだった。



「…、不破先輩」

「なんだ」

「今日の本は──その本は面白かったですか?」

「そうでもないな。何を書いているのかさっぱりだ」

ゴミを集めた袋の口を縛り終え、不破の横に追い付いた花菜は代わりに自身の口を開いた。

不破のポケットから半分出ている本の表紙には、『流体力学の・・・』という小難しいタイトルが印字されている。それにさっと目を通した花菜は、返答の予想を付けつつも聞かずにはいられない。

「それも…──盗品ですか」

「昨日盗った」

息をするような軽さで不破が答える。

「お前が読むか?」

「いらない…っ。読みません」

そして悪びれずに花菜に差し出そうとする。

これで何冊目? 花菜が知っているだけでもとっくに片手では数えきれない。

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