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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第14章 飽きられるまで
「食いたいなら食えばいい」
「あれを?べ、べつに食べたいとかじゃあ…っ」
自分の願望が顔に出ていたことに気付いた花菜は、気恥ずかしさで俯いた。
本当は大いに興味があった。
甘党である彼女にとって、実家の離島から越してきてからというもの学校の周りには魅力的な店がいくつもある。
スーパーの売り場にあるアイスやケーキも美味しいのだが、それよりもっと華やかで可愛らしいスイーツたち…。いったいどんな味がするのだろう。
興味はある。でも、そんな贅沢はできない。
「わたしはあんなのいりません。学校帰りに買い食いは駄目ですし…っ」
今までずっと逃げてきた華やかさだ。
今回も逃げようと思い、花菜は露店に背を向けた。
「……チ」
グイッー!
「ぅぅ──ッわ!」
「お前、面倒臭い…。さっさと来い」
ところが振り返って足を踏み出した瞬間に、舌打ちをした不破に腕を掴まれて無理やり引っ張られた。
そのままグイグイ引かれるから、彼女は後ろ向きのまま店の方へ連れて行かれる。
「せっ先輩!? ちょっ…ッ──や、だ」
「黙れ」
遠くに見ていた人溜まりの声が、背中にどんどん近付いてくる。
“ 不破先輩…っ、どうして ”
本気で踏み留まろうとする花菜をやすやすと連行し、ついに彼は店の前まで来てしまった。