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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第14章 飽きられるまで
“ 今、わたし…… ”
ときめいてしまった。
こんな男(ヒト)に、また…ときめいてしまった。
手がちょっと震えた。顔も赤くなっているに違いない。
花菜は誤魔化すためにワッフルクレープをさらにひと口食べた。
自分のよりもずっと大きい半円状の穴の、すぐ横にかじり付く。
今にも溢れ落ちてしまいそうなチョコレートアイスは濃厚で、口の裏に貼り付くような甘さ。添えられたたっぷりのクリームにはナッツの風味が香った。
ふんわりと厚い生地の中、砕いたナッツが飛び出してきて芳ばしい。
“ おい しい… ”
可愛くて、美味しい。幸せな味。
ずっと憧れていた味は彼女を裏切らなかった。
「美味しい……です、先輩」
「…そうかよ」
「これ…っ、すごく好きです。ありがとうございます」
「──…」
相手の怖さも忘れて無邪気に笑った花菜。
その笑顔を彼女が、兄の前以外で見せたのはいつぶりだろうか。
たったひとり、伊月にだけ見せてきた表情で…彼女は不破に礼を言った。
そんな彼女の顔を見下ろして不破は目を細める。
彼は彼で感じた事があったらしく
「……」
「あれ?先輩…?」
何故か少しだけ、切ない空気を醸し出した。