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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第15章 汚れた安堵
その後、不破の後ろを歩いていると、数分と経たないうちに見覚えのある場所に辿り着いた。
花菜は瞬時に顔を強ばらせる。
ここは…
知っている。
不破が入ろうとしているその古びた空きビルは、彼女にとって悪夢の象徴。
“ わたしが先輩たちにレイプされたビル…っ。どうして?家に行くんじゃなかったの…!? ”
故障しているエレベーター。
あの時と同じように無言で階段を上がる不破。
花菜は階段の直前で立ち止まった。
「…っ…先輩!わたし…あんなのはもう嫌です…!!」
「…?」
「家に行くって言ってたのにどうしてまたここに…」
「──…家だ」
「…ぇ」
「俺はここに住んでいる。だからここが家だ。うだうだ言わずにさっさと来い…」
しかし不破はこのビルを指して"家"なのだと譲らない。
また大勢に乱暴されるのかと足がすくんで動かせられない花菜に、そんな不安を全く汲んでいない彼が冷ややかな声で命令する。
「自分で上がらないなら、足持って逆さ吊りにして運ぶぞ」
「…ッ─ゃ、えっ…と、あ、上がります」
今、自分は脅されたのか?とにかく彼の言葉に背く勇気は花菜になかった。