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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第15章 汚れた安堵
“ これが家?確かに住めなくはないかもしれない。でも、でも……何かが ”
何か大切な物が足りない。
風呂場から戻った花菜は、シャツを脱いで上裸になった不破に目を向けた。
「…先輩の、家族は?」
「……」
「独りで住んでるわけじゃないですよね?だってわたしたちまだ高校生…」
「…ハ」
何か変なことを言っただろうか。
脱いだシャツをソファーの背もたれに投げた不破が、彼女と目も合わせず薄ら笑いを浮かべ
そのまま、脚を組んでソファーに座る。
他に座るところが見当たらない室内で、花菜も恐る恐る隣に腰を下ろした。
「あの…もしかして実家が遠くにあるんですか?わたしもそうなんですけど、その、だから今はお兄ちゃんのアパートから学校に通ってます」
「……」
「不破先輩も同じですか……?」
「バカ丸出しだな、お前」
「ば、ばかって…っ」
「俺に家族はいない…──それだけだ」
的外れな事ばかり言う彼女に、不破は少しばかりいつもより柔らかな目を向ける。
そこに伊月のような温かさがあるわけではなく──
無知で愚かな相手に対する、諦めを含んだ柔らかさだ。