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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第16章 崩壊への誘い
控え目で丁寧なノックが、三回。
あの女が戻ってきたのかもしれないが、わざわざ出向いて鍵を開けるのを面倒に思った不破はしばらく無視していた。
コン
「……ハァ」
しかしその来客に帰る気配はない。
「……」
「──…不破くん。ここを開けてくれないか」
「…!」
するとノックに続いて、これまた控え目に声がかかった。
不破はその声に覚えがある。意外なのは違いないが、面倒だという感覚は消えた。
彼は机から降りてのそのそと扉に近付く。
「………何か、用かよ」
「──…」
鍵を開けて扉を引くと、そこに立つ青年がいつかと同じ裏のある笑顔で不破に礼を言った。
「開けてくれてありがとう」
「それはいい……で、どうかしたか」
「妹を迎えに来たんだ」
大学の荷物らしいリュックを肩に下げ、リネン生地の白いTシャツをサラリと着こなす細身の青年。
「ここにいるんだろう?」
不思議と確信のある声色で、伊月が不破に問いかけた。