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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第16章 崩壊への誘い

掴んで引き寄せた逆の拳で不破は伊月の腹を殴った。
「…ッッ」
そして拳を下ろす間も無しに、腹を抱えて中腰になった彼の顔に蹴りを入れる。
凶暴な膝が伊月の顎を横からえぐり、されるがままの伊月は階段まで吹っ飛ばされた。
勢いを殺せぬまま上り階段に倒れ込む。
モルタル舗装の固い段差に半身を打ち付けた伊月は、痙攣する首をなんとか起こして不破に視線を送った後──頭の重みに耐えかねてか仰向けにぐったりとした。
…不破の肩からタオルが落ちる。
「…っ」
「…ッ──ク、カハッ…!ハァっ、ハ‥‥!!」
半開きの口から痛々しく咳き込んだ伊月を、怒り冷め切らぬ不破は血走った目で見下ろした。
アッシュグレーの濡れた毛先が彼の頬に纏わり付きその形相を半分だけ隠している。
対して伊月はさらさらと湿り気のない黒髪の隙間から、視界を霞ませ弱々しく見上げた。
「俺について嗅ぎ回ったのか。よくそこまで調べ上げたな…」
「…ッ…フ…。君…があの子に関わろう と…するなら…っ、…ッ…ハァ、多少なり……調べる、さ」
先に仕掛けてきたのはそちら側だろう?
途切れ途切れの言葉で、伊月は不破に答えた。

