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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第16章 崩壊への誘い
その態度がよけいにこの男の神経を逆なでると知っていながら。
…これでは伊月はまるで不破に痛めつけられるために来たようなものだ。
…もしくは、" まるで " ではなく
本当に彼の目的がそれにあるのではと、馬鹿げているが十分に考えられる。
「君の好きにすればいいよ…不破くん。あの子を守りたいなら守ればいい。君のやり方で」
「あんた、気味が悪ぃな」
「……ああ、そう…かもしれない」
いやきっとそうに違いない。そう自嘲した伊月はまさに狂気だった。
不破の握った拳が弛む。
殴る事が無意味だとわかったからか、恐れが怒りに匹敵したのか。伊月の目的を察したうえで──
《 あの子を守りたいなら…… 》
その目的があまりに的外れだと、気付いたからなのか。
「…………あんた、勘違いしてないか?」
「……?」
「…っ…俺があいつを守る?─ンなわけないだろ」
ここで不破は伊月から視線を外した。
眼光の鋭さがスッと消え去る。
彼は余裕を取り戻した表情で落ちていたタオルを拾った。