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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第16章 崩壊への誘い


「あんたら兄妹を、壊す」

「……」

「そのために近付いた。歪んでるくせして見てみぬふり……曖昧なコトして家族のままでいようとしてるあんたらを、壊すのが俺の目的だ」


ぐっと足の指に力を入れて踏み出した不破は、壁にもたれる伊月の前を素通りしてドアノブに手をかけた。

「コソコソ半端なことやってねぇでさっさと奪え。俺が捕る前に」

そして崩壊しろ──。後戻りなんてできないくらいに拒絶され非難を浴び、二人で社会から孤立しろ。

不破は自分だけ室内に戻り、後ろ手にドアを閉めた。

「……ハァ」

深い溜め息。

サムターンのつまみは、回すのを忘れた。


──


それきりドアの向こう側から物音は一切しなかった。

伊月はまだ同じ場所に立っているのだろうか。階段を降りる音も、何もしない。

不破もしばらく動かずいたが、変に喉の奥が乾いて水を欲した。

だがここには冷蔵庫もないから、暑苦しいこの時期に飲める物は見当たらなかった。

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