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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第17章 いつか 離ればなれ
「遅くなってごめん。何してるの?」
「洗濯物…。ほら今日は雨が降ってたでしょ?だから朝は干せなくて」
「そっか。ちゃんと家事ができて偉いね」
花菜の頭を撫でようと伸ばした伊月の手。
しかし、彼女が小さく縮こまったことにより停止した。
中途半端に宙に留まった後──彼女が両手で掴んでいる服の端を捕まえる。
「……それで、この服は?」
「これは、その…」
「僕のTシャツじゃあ…ないよね。どうしたのかな」
花菜の背中がますます小さくなる。
ベランダの角に身体を向けている彼女は、兄と目を合わせないようにしながら辛うじて横顔を見せた。
彼女が密かに干そうとしていた男物のシャツは、確かに伊月の物ではない。
「わたしが制服を汚してしまって、だから」
「──…」
「だから代わりの服、貸してもらったから…それで洗って返さなきゃと思って、今──」
「誰だい」
「…っ」
「………誰のなの?」
一瞬…
ホンの、一瞬
伊月はこのシャツをベランダから放り投げてしまおうかと
水溜まりの泥の上へ落としてしまおうかと、そんな気を起こした。