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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第17章 いつか 離ればなれ
そんな考えがよぎるだなんて伊月自身も思わなかった。
自分は焦っているのか…?
だったら、本当に今さらだ。
花菜は間違っても伊月のものじゃない。彼の今の立場は、いわば花菜の保護者。
彼女を保護し…そして見送る役目でなければ。
彼女を、彼女だけの自立した世界へ送り届けるための…それ以上でも以下にもなれない存在なのだ。
それが家族。
それが兄妹──。
『 半端なことしてねぇで奪え。俺が捕るぞ 』
どれだけ愛を注いだところでいずれ何者かに奪われる運命(サダメ)。
どんな日も近くに寄り添い、慕い合い、それでも手に入れてはいけない女。
「……」
「お兄ちゃん…!」
それが君なのかい? 花菜───…
「花菜……、このシャツ を、君に渡した男は」
「…っ」
「君のことを、愛しては……」
ピンポーン
その時伊月の言葉を遮ったのは、不思議なほどよく届いたチャイムの音。
伊月の背後で室内に響いた。
彼の心の中のぎしぎしとした軋み音を、跳ね除けるようだった。