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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第17章 いつか 離ればなれ
似ている…。
でも、相手の方が鼻筋がいくらかスッとしていて目が大きい。控え目にほどこされた化粧の効果もあって自分よりも"綺麗"だと花菜は思った。
「これを…伊月くんに渡しに来ました」
「あ、お兄ちゃんにですね」
「…っ…あなたは妹さんですか?」
「…?そうですけど」
妹と知った途端、相手の様子が変わった。
どちらかと言えば表情豊かでなさそうな女(ヒト)なのだが、腹の中で一周渦を巻いた何かがその顔に表れている。
「……」
「あのー、兄に代わりましょうか」
「……いいえ」
ゆったりと話すところは伊月と似ている。
二人が並んで穏やかに談笑している光景が想像できてしまった。
「これを伊月くんに渡してください。明日からのインターンで必要なのに…彼、忘れて帰ったから」
「は、はい。わかりました」
相手は同じ速さで淡々と話しながら持っていたクリアファイルを花菜へ差し出した。
それを受け取る花菜に向ける目は、初見よりも確実に冷たい。