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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第17章 いつか 離ればなれ
“ 忘れて帰ったって、どこにだろう ”
よく理解できないままファイルを受け取る花菜。
相手の冷たい視線に晒されても、理由がわからなくては傷付くこともできない。
「伊月お兄ちゃんのお友達ですか?」
「……」
「同じ大学の人…?」
「友達じゃありません」
「えっ、…なら…」
どういう関係なんだろう
「…彼女です」
「かのじょ……?」
「伊月くんとは大学で知り合って、二年前から付き合っています」
「‥‥ぇ」
その女(ヒト)は、最後に笑っていた。
口の端を上げるだけの大人っぽい笑顔。
自分と似ているけど自分よりも綺麗なこの人は、やっぱり自分にない大人の色気を持っている──それを、花菜は思い知らされた。
「…じゃあ、帰ります。夜遅くに失礼しました」
そうか、そうなんだ。
この冷たい目は高校の女の子たちと同じなんだ。不破先輩と一緒にいる自分を見る同級生たち──その、負の感情。
晒されすぎて慣れてきた視線。
高校の皆ほどあからさまではないにせよ、同じような"敵意"を受け取った。