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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第17章 いつか 離ればなれ
そして、たぶん
今のわたしもこの人に同じ敵意を抱いている
背中を向けて去っていく相手はわかってないと思うけれど
「花菜、何を渡されたの?」
「これ…だよ。お兄ちゃんにって」
「もらうよ」
ドアを閉めて鍵をかけ直す。
畳部屋に戻った花菜は預かったファイルを伊月に渡した。
「ああこれ、明日から必要な書類だね。忘れるなんて……フ、うっかりしていたな」
「明日って?インターンって聞いたけど…」
「就活の一貫で、職業体験…みたいなものが明日から五日間あるんだ」
「……」
花菜は伊月の顔を見れずに俯いている。
そして彼女は……兄の腹部に両手を当てて、彼が着ているシャツをぎゅっと握りしめた。
「──…さっきの女の人も一緒に行くの?」
「…っ…花菜、どうし…」
「彼女なんでしょう?付き合ってるって…っ。そのインターンでも、一緒…なの?」
ドクッ‥‥
か細い声が伊月に問うた時
彼の胸が戸惑いでざわめいた。