この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第17章 いつか 離ればなれ
妹としてでなく女として…伊月のシャツを掴んでいた。
「ねぇ、…あの人と一緒に行く、の?」
「…っ」
伊月は思わず口元を手で隠した。
花菜に見られてはならない表情に違いなかった。だから隠す必要があった。
口許が弛んだとか…そんな純粋な喜びじゃあない。
すぐには信じられず、戸惑いが顔の筋を収縮させ
──そして疑いの気持ちが目の奥を力(リキ)ませる。
「一緒だとしたら、花菜はどう思うんだい」
「わたしは…!!」
片手で花菜の頬に触れると、彼女は額を伊月の胸に押し当ててきた。
伊月が手で顔を隠したように…彼女もまた、自分の表情を見られないようにしている。
きっと女の顔をしているからだ。
今の伊月が兄の顔を保てなくなっているのと同じ。
「花菜…僕を見て」
「…や…だ」
「見るんだ」
「ん…ッ」
逃してはならない瞬間だと、本能に突き動かされた伊月。
彼は花菜の小さな頭を両手ではさんで自身に向けさせた。