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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第17章 いつか 離ればなれ

妹としてでなく女として…伊月のシャツを掴んでいた。

「ねぇ、…あの人と一緒に行く、の?」

「…っ」

伊月は思わず口元を手で隠した。

花菜に見られてはならない表情に違いなかった。だから隠す必要があった。

口許が弛んだとか…そんな純粋な喜びじゃあない。

すぐには信じられず、戸惑いが顔の筋を収縮させ

──そして疑いの気持ちが目の奥を力(リキ)ませる。


「一緒だとしたら、花菜はどう思うんだい」

「わたしは…!!」

片手で花菜の頬に触れると、彼女は額を伊月の胸に押し当ててきた。

伊月が手で顔を隠したように…彼女もまた、自分の表情を見られないようにしている。

きっと女の顔をしているからだ。

今の伊月が兄の顔を保てなくなっているのと同じ。

「花菜…僕を見て」

「…や…だ」

「見るんだ」

「ん…ッ」

逃してはならない瞬間だと、本能に突き動かされた伊月。

彼は花菜の小さな頭を両手ではさんで自身に向けさせた。

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