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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第18章 僕を見て
靴を脱いだ伊月は、その場ですぐさま靴下を脱いだ。
理由ははっきりしないけれど、足裏に纏わるそれが不愉快だ。
脱ぎ捨てた靴下は玄関先に放置した。
そして彼は裸足になり
ひたひたと廊下を歩く。
途中で視線を下ろせば、台所の前に踏み台が置いてあった。
「──…」
背の高い伊月は踏み台を使わない。
それを普段から用いているのはもっぱら花菜のほうだ。
彼女は時々、踏み台を利用してシンクの上に直接上がっては、上部の収納棚から必要な物を取っている。
「……また、か」
だから今も──覚えのある袋が台所に置いてある。
花菜の手が届かない場所にと思い、わざわざ伊月が高い所に収めたというのに
わざわざ
彼女はそれを持ち出していた。
隠していたつもりだった。
あのココアだった。
シンクの上に放置された開封済みのココアの袋を横目に、伊月は邪魔な踏み台を足を使って壁際に寄せた。