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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第18章 僕を見て
朝から敷きっぱなしの布団は変わらずそのままで、そこで花菜は眠っている。
横向きになり背中を丸めているものだから、ただでさえ小柄な彼女がますます小さい。
そんな彼女は胸の前で本を抱いていた。
電気を点けていないのだからそれを読んでいたわけではないだろうに…彼女は大事そうに抱いている。
不思議に思いつつ伊月は彼女の腕を持ち上げて本を取った。
確認すると、それは今日の帰り道に伊月が本屋の老婆から譲り受けた英文学だ。…本の内容はまだ知らない。
表紙の文字も部屋が暗くて読めなかった。
「…こんな物にすがりついてどうするっていうの」
伊月が本をテーブルに置く。
部屋の隅に寄せた丸いローテーブルの上には、白いマグカップが洗われもせず放置されていた。
スー スー
「いつもなら飲んだ後のコップはきちんと洗う君なのに珍しいな」
「……」
「それすらできずに寝てしまったの? まったく困った娘(コ)だね……」
マグカップの横に本を置いた伊月はすぐに花菜の隣へ戻った。
布団に腰を下ろし、寝息とともに上下する彼女の肩に手を添えて、頭の上から逆さまに顔を覗き込む。