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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第18章 僕を見て
目を閉じている彼女はいつも安らかだ。
それを見る伊月まで切なく優しい気持ちになる。
“ 君はどんな夢を見るんだろう…。そうやっていつも逃げ込む所は素敵な場所かい? 君が欲しいものをくれるのかな ”
彼女にとって理想の"兄"が夢の中にはいるのだろうか。長年をかけて伊月が演じ続けてきた偽物の姿があるのだろうか。
その男は…君がすがりつくに相応しい愛をくれるかい?
「本当の僕を拒絶する……憎らしい、花菜。それでも愛してる」
伊月は両手でそっと花菜の頭を持ち上げると半開きの唇を塞いだ。
もちろん反応はない。
いつもの事だ。
例のココアに混ぜてあるモノはそれほど強力であり、伊月がわざわざ違法なルートで取り寄せている特異品。
だから朝にならない限り花菜は目を覚まさない。
心が抜け落ちた息をしているだけの人形。
無茶苦茶に弄ばれたところで怯えない身体──。