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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第3章 ルール


「でもね、花菜。もしかしたら…守る必要のない社会のルールも存在するのかもしれないよ」


「例えば?」


「さぁ…すぐに例えは浮かばないけれど」


食べ終わった二人分の食器を重ねて片付ける準備をしながら、まろやかな声でゆっくりと話す。

憤る花菜を落ち着かせるためか、生まれ持った彼の性格が故なのか。


けれど徐々にその声は…真剣味をおびてきた。


「結局、世の中の大抵の人達は、何のリスクを負う覚悟もなくやれ個性だ自由だと協調性を批判するばかり。きっと…花菜が不満に思うのもさ、それが理由なんじゃないかな」


声のトーンは変わらず穏やかだが

多くの言葉を煮詰めたような重みが感じられる。


伊月はまとめた食器を持って立ち上がり、廊下のキッチンにそれを運んだ。

音をたてないようにシンクに置いて──花菜に背を向けたまま

今度は小さな声で呟いていた。

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