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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第18章 僕を見て

突き刺すような振動が背中を駆け上り、腸(ハラワタ)がねじ切れるかというほどに痛んだ。

「…は─ッ…ぅ゛‥ぁ゛‥‥!」

呼吸の仕方がわからなくなった喉から気味の悪い音が零れる。

ココアの甘い匂いが堪えようのない嫌悪をもたらす。

吐き気に襲われる。

吐き出す物がない。

吐き気はおさまらない。

吐き出す物なんてない。

「…ク‥ゲホッ!ゴホッ!──ハァっ…ハァ、ぅ゛‥!!」

どうして……!

「ハァハァハァっ…!‥‥な‥ンデ」

本当の恐怖を与えられた人間とは…どうやら

悲鳴をあげるわけでもなく
声を殺して静かに生を諦めるわけでもなく

息を吸う事を忘れて無様にのたうち回るらしい。

「カ─ッ‥は!…ハ、あ゛‥ッッ‥!? ああー!」

胸を押さえて小さく丸まった伊月だが、そうすることで怪我を負った背中がよけいに痛み、耐え切れず声を張り上げた。


“ 死ぬのか ”


苦しみが終わらない


“ 僕は死ぬのか…!? ”


死ぬなら


どうせ、これほど呆気なく死ぬのなら


これほど簡単に死ねるのなら……!


“ どうして最期まで…っ、隠し通す事ができなかった? 僕の汚い欲望なんて彼女に知らしめなくてよかったのに…! ”


彼女の前では兄でいようと

兄として生きなければならないと




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