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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第3章 ルール
テーブルを移動させて空いたスペースに、隅に畳んである布団を広げる。
ワンルームの部屋にひとつだけあるベッドを花菜にゆずった伊月は、この布団で眠るのだ。
それについて花菜は申し訳ないと感じていたが、伊月は彼女が床で寝るのに大反対したから。
「いつものココアを作るから、それを飲んだら寝るんだよ」
「まだあまり眠くないけど…」
「つべこべ言わない! 歯磨きも忘れないように」
「はーい」
布団を敷いて、テーブルを拭くためのふきんをキッチンまで取りに行くと、早くも皿洗いは完了していた。
湯を沸かし始めた兄の横。花菜はふきんを濡らしながら彼を見上げる。
「あの……ありがとう、お兄ちゃん」
自分が照れないように気を配りながらそう告げて、言い逃げ上等にさっさとリビングに戻る。
絞りが甘かったせいで、拭いたテーブルはびしょびしょになってしまい──
花菜はこそっと、自分のパジャマの裾で水滴をぬぐった。