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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第19章 シロツメ草の記憶




──…



波の音
土の匂い
一面の花びらと……偽りない笑顔


そのどれもがもう、ここには無い物







「……何してる、お前」

日暮れが近付く放課後の武宮高校。

立入禁止の屋上に出た不破は、ハト小屋の影にうずくまっている女を見つけて声をかけた。

「朝から教室にいないと思えばここだったのかよ」

「…っ…せん、ぱい」

「自発的にサボるのはお前にしては珍しい」

「…サボり…そうか、そうですね…」

歩み寄る不破に横顔を見せた花菜だが、すぐに視線を落とした。

「学校に来て……でも、鞄も教科書もぜんぶ忘れて来て、だから」

「それでここに?」

「はい」

弱々しく笑った彼女は顔を見られまいと下を向く。

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