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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第19章 シロツメ草の記憶


「──…わたしたちは兄妹です」

「…!」

「もし認めたら、わたしがあの時目を覚ましていたら…ッ…──妹じゃいられなくなる…!!」

「……」

「お兄ちゃんがお兄ちゃんじゃなくなる。わたしが感じた幸せは……ッ……絶対に、許されない、こと だもの」

「……何にそこまで縛られている」


あの兄貴か?

不破は静かに問い続けた。


「違います。お兄ちゃんはそんな事しない」

「っならお前が頑なに兄妹にこだわるのは何なんだ……」

「……」

「何が怖い?」

「…………わからない」


花菜が小さく身をよじる。

まるで四方をガラスの箱に閉じ込められているような…そんな心境の彼女は

確実に迫る崩壊に怯えながら、とても慎重に言葉を選んだ。


「……わかりません。でも、怖い」

「……何故だ」

「大切だから。誰よりも大切な家族だから…ッ…そんな簡単に、変われないんです…!」


ガラスの向こう側に遷ろう
傷だらけの真実を

見たくない。知りたくない。

間違った事を口走ればガラスが砕けてしまうから、彼女は慎重でいたかった。


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