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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第19章 シロツメ草の記憶
その時、二人きりだった屋上が途端に騒がしく変わった。
扉を開け放ち出てきたのは花菜のクラス担任である男性教師。
それに続いて教頭、校長と、よく見る手品の万国旗のように続けざまに飛び出してきた。
自分の名前を呼ばれた花菜は、状況がわからず固まっていたが…
「…あ」
不破にボタンを外され乱れた襟を慌てて手で押さえ、上半身を起こした。
「なっ…不破お前、鈴村さんに何を?」
「チッ……うざ。何だ……あんた等」
駆けつけた所で不破の姿を見た教師達は顔を強張らせる。
「ち…違うんです」
花菜は急いで腰を上げ、胸元を押さえたまま不破の前に割って立った。
「不破先輩は何も…っ」
「……!本当か?」
「あの、すみません今日は鞄を忘れて!それで授業には……、その……」
「…っ…いやその事は今はいい。下駄箱に靴があるから校内を探してみたが、ここにいたんだね」
「あの……?わたしに何かありましたか……?」
授業をサボったから怒られる。
とてもそんな要件でない事は、このやり取りを見物する不破にも察しが付いた。