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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第20章 溺れた兄妹

「すずむらっ…鈴村花菜です!お兄ちゃんは…!?」

彼女の質問は、病棟のナースステーションでも同じように繰り返された。

「落ち着かれて下さいっ。お見舞いの方ですね?」

それに対する相手の反応も似たようなもの。

カウンターをはさんで花菜と向かい合った看護師は、周囲を気にしない大声の彼女を諌めるように身を乗り出した。

とにかく興奮しないように言いきかせたところで

効果はこれっぽっちも無さそうだが。

「お兄ちゃんはどこ……!?」

「すぐにお調べしますから…っ」

「急いでるんです!」

「わかっておりますからお静かに!」

彼女の対応に追われている間、他の看護師がパソコンから入院患者のデータベースにアクセスする。


カチ カチ カチ


「………あら?」


しかし苗字を入れて検索しても、ヒットしたのはまだ小学生の子供がひとりと、六十過ぎの糖尿病患者がひとりだけ──。

彼女の兄らしき患者はいない。


「失礼ですがお間違いの可能性はありません…よね?」

「…っ…もちろんです確かにこの病院だって」

「ですけれど…。念のためもう一度お名前を伺っても宜しいでしょうか?」

「だから…──ッ」


何やらトラブルが起こっているらしく益々騒がしくなった病棟に──

「…ッ…ここにいたか」

花菜より遅れて病院に入った不破が、先程の医者と同じタイミングで追い付く。

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