この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第20章 溺れた兄妹
「すずむらっ…鈴村花菜です!お兄ちゃんは…!?」
彼女の質問は、病棟のナースステーションでも同じように繰り返された。
「落ち着かれて下さいっ。お見舞いの方ですね?」
それに対する相手の反応も似たようなもの。
カウンターをはさんで花菜と向かい合った看護師は、周囲を気にしない大声の彼女を諌めるように身を乗り出した。
とにかく興奮しないように言いきかせたところで
効果はこれっぽっちも無さそうだが。
「お兄ちゃんはどこ……!?」
「すぐにお調べしますから…っ」
「急いでるんです!」
「わかっておりますからお静かに!」
彼女の対応に追われている間、他の看護師がパソコンから入院患者のデータベースにアクセスする。
カチ カチ カチ
「………あら?」
しかし苗字を入れて検索しても、ヒットしたのはまだ小学生の子供がひとりと、六十過ぎの糖尿病患者がひとりだけ──。
彼女の兄らしき患者はいない。
「失礼ですがお間違いの可能性はありません…よね?」
「…っ…もちろんです確かにこの病院だって」
「ですけれど…。念のためもう一度お名前を伺っても宜しいでしょうか?」
「だから…──ッ」
何やらトラブルが起こっているらしく益々騒がしくなった病棟に──
「…ッ…ここにいたか」
花菜より遅れて病院に入った不破が、先程の医者と同じタイミングで追い付く。