この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第20章 溺れた兄妹
そして
不破達とは反対側の廊下からは、さらに別の知人が現れた。
「あなた……!たしか彼の妹の」
「ぇ!?…っと」
声をかけたのは向こうのほうから。それに反応して振り返った花菜は、ほとんど忘れていた相手の顔をなんとか記憶に結び付ける。
昨日会ったばかりだ。
昨日、アパートまで伊月にファイルを届けに来た…そう、あの女だ。
『 伊月くんとは大学で知り合って。二年ほど前からお付き合いしています 』
自分は伊月の女なのだと宣告してきた人。
「ど…どうして、また」
何故またこうして会わなければならなかったのだろう。
「私が救急車を呼びました」
「あなたが、ですか…?」
「だって彼はインターンシップ先にも来ないし電話しても連絡付かないし…っ。嫌な予感がして彼の家まで行ったら中で…伊月くんが倒れて…!!」
「……!」
そこまで言うと相手の女は下を向き、つい大きくなっていた自身の声を呑み込んだ。