この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第20章 溺れた兄妹

少なくとも、兄を探して取り乱す先程までの彼女はなりを潜めたようだ。
「お兄ちゃんは無事ですか……!?」
鍵は両手でしっかりと受け取る。
「……ええ、無事です」
「…ッ…よか…った…!」
「でも意識は戻っていなくてっ…もう心配はいらないと先生は言っていたけれど」
「……!」
「伊月くんの部屋はそこを真っ直ぐ進んだ一番奥の所です。ここから見て右手側」
「…っ、ありがとうございます!」
話し終わりを待たずに、花菜は教えられた病室へ走り出した。
静かにするよう注意しようとした看護師は完全に出遅れ、すでに遠のいた彼女の背中を溜息まじりに見送る。
病室のスライドドアを横に引き、中へ吸い込まれるように姿を消した花菜を──
不破を含めた一同は、その場から目だけで追いかけていた。

