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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第20章 溺れた兄妹

少なくとも、兄を探して取り乱す先程までの彼女はなりを潜めたようだ。

「お兄ちゃんは無事ですか……!?」

鍵は両手でしっかりと受け取る。


「……ええ、無事です」

「…ッ…よか…った…!」

「でも意識は戻っていなくてっ…もう心配はいらないと先生は言っていたけれど」

「……!」

「伊月くんの部屋はそこを真っ直ぐ進んだ一番奥の所です。ここから見て右手側」

「…っ、ありがとうございます!」


話し終わりを待たずに、花菜は教えられた病室へ走り出した。

静かにするよう注意しようとした看護師は完全に出遅れ、すでに遠のいた彼女の背中を溜息まじりに見送る。

病室のスライドドアを横に引き、中へ吸い込まれるように姿を消した花菜を──

不破を含めた一同は、その場から目だけで追いかけていた。




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