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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第20章 溺れた兄妹
白い壁に囲まれた清潔な部屋。
もし今が昼間で窓の外が明るければ、射し込む太陽のフラッシュで目を焼かれてしまいそうな、そんな白。
そこに置かれたベッドはひとつだけ。
点滴に繋がれ横たわる青年の横には、声のかぎり彼の名を呼び続ける少女がいた。
「伊月お兄ちゃん!」
「……」
パチっ..
眠っている彼の、睫毛が震える。
震えた睫毛はすぐに動くのをやめた。
少しの時間…止まっていた。
けれどその間も少女の呼びかけは終わらなくて、諦めた彼は瞼を上げた。
外は確かにもう暗い。
それでもやっぱり白い壁は眩しくて…だから彼は無意識に、視界を手で隠そうとした。
「……?」
だが、動かそうとした手は自由が効かない。
点滴のチューブと繋げられた手首は、簡易なベルトでベッドに固定されていた。