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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第21章 眠り姫の呪い

「彼氏?…わたしに?」

「ちょっと前のことだけどー。〇〇あたりで一緒にいるの見かけたんだよね」

「……?」

そこは花菜が住むアパートの近くだ。

それにこのやり取り…そういえば過去にも覚えがある。

「それ、わたしのお兄ちゃんだよ」

同じ返答をした筈だ。

「は?なによそれ。今学校に来てる人よ?」

「…うん。先生と話があるから、今日はお兄ちゃん学校に来てるはずだけど…」

「ふーん」

そして前にも思ったことだが、こうして兄の話題が同級生の口から出るのは不快であった。

かけがえのない大切な場所に土足で踏み込まれるのは、どうにも面白くない。

けれどそれは相手のほうも同じらしく、せっかくハイテンションで話しかけたというのに余所余所しい花菜の態度が気に食わない様子だった。

男ウケしそうなパッチリ二重の目元を、意地悪く歪ませる。


「それならどうして " お兄ちゃん " が先生に呼ばれたの?普通、父親か母親でしょ?」

「それは…」

「知らないの?鈴村さんってブラコンなんだよ。高校生にもなって兄妹ふたりで買い物とか行くらしいし!」

「えーホントに?仲が良いというかそれ…ちょっとお兄さんが可哀想…。こんな大きい妹の子守しなきゃいけないとか面倒くさ〜い」

「そんな事ないよ…」

「そんな事ない?そんなの鈴村さんにはわかんないじゃない」

きゃはは、っと小馬鹿にした笑いが連鎖する。

いまや学年一の嫌われ者となってしまった花菜にとって、こうした嘲笑は日常だった。

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