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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第21章 眠り姫の呪い


「僕宛の郵便物はアパートじゃなくて私書箱に届くようにしてるんだけど、わざわざ回収しに行くのも面倒でさ。今回もまた溜め込んでしまった──…まぁこうでもしないと、あの子の目に触れたら一大事だから」

「用心深いな」

「もしこの郵便を見てしまったら、あの子はパニックになるだろうからね」

「ああ……。そうだろう」


伊月の鞄から今ものぞいている封筒の──

"宛名"に書かれた名前は、"鈴村"ではなかった。


ひと月前にも病院の廊下で、不破はすでに同じ苗字を見ている。

だから彼は驚かない。

彼はいたって冷静で、それでいて静かに受け止めている。

僅かばかり抱いた恐怖が…その静けさに拍車をかけているようにも見えた。

しかし花菜ならこうもいかないだろう。

もしこの事実を突きつけられたなら、彼女は混乱し…発狂してしまうかもしれない。

花菜にとって兄は " 鈴村伊月 " という男──

コレが揺らぐ事だけはあってはならない。

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