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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第21章 眠り姫の呪い



「──…」

「……何か言いたそうだね」



揺らがない……決して

彼女は夢から、覚めてはいけない



「昔ね……いたんだよ。実の妹を愛するあまり欲情して、拒絶され、……あげく自ら命を断った馬鹿なヤツが」



不破は何も言わなかったが、その心境を汲み取った伊月は自ら話し始めた。

とことん無様(ブザマ)だと思っているのだろう。

無駄な足掻きだと呆れているのだろう。

それでも伊月にはこの道しかない事を、不破に話してもいいと思った。



「そいつは僕の幼馴染だった。ひとりで本を読み漁ってばかりの根暗な僕とは正反対で、自由で我が儘で怖いもの知らず、そのくせいつも人の輪の中心にいるような男でさ…──ああ、こんな話は興味ないよね」

「……」

「とにかく、そいつはもういない」



──…でも



伊月は言葉を続ける。

それで終わればずっとラクだったのにと

恨めしささえ感じるほど、皮肉を込めた優しい声色で。


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