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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第21章 眠り姫の呪い
「──…でも
あの子の中で兄は今も生きている。どれだけ周囲の大人に呆れられ、哀れまれたとしても花菜は……決して、疑わない」
「救いが……ねぇな」
「まぁ、ネ」
いつからなのだろう
「学校の先生達も口裏を合わせてくれているんだ。親切だよね。さすが……他人事(ヒトゴト)だ」
元来(ガンライ)気弱で穏やかなだけだったこの男が、花菜のために理想の兄を演じ続けるうちに…
自分自身を打ち消され
" お兄ちゃん " である事を自分でも錯覚できるようになってしまったのは、いつからなのだろう。
覚えていない。
思い出せないくらい、ずっと昔なのだと思う。
境目なんてわからなくなるくらい自然に、彼は、兄になっていた──。
なりたくなんてなかった
「君は確か……僕を見て『不自由』だと言ったね」
「……」
「大正解だよ。でも同時に勘違いをしている。
僕を縛っているのは社会の目でも倫理感でもないし…ましてや血縁でもない。──…あの子、そのものなんだ」
花菜を手に入れるためならどんな犠牲でも差し出す覚悟だったのに
それすらできない。
" 兄 " でない伊月は、花菜にとって用済みなのだ。