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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第4章 発芽
ふと、花菜は顔を上げた。
踊り場から見えるのは屋上に出るための扉。
扉の前にはもちろん誰もいない──だが不自然なことに、声が聞こえたのだ。
“ 屋上に誰かいるの? ”
武宮高校の屋上は立ち入り禁止だ。
「変なの…」
立ち入り禁止の場所から声がするのが気になって、花菜は階段を上がってみた。
扉の前に着いて、窓から向こうを覗いてみても人の姿は見えなかった。
恐る恐るドアノブを回すと…
“ …っ、開いてる ”
何の抵抗もなく扉は開いてしまった。
僅かな隙間から風が入り込む。
髪をふわりと撫でたそれが花菜にとっては懐かしい。
視界を邪魔する物がない、ひらけた空も──故郷の田舎を離れてから久しく見なかった気がする。
昨夜の雨による水溜まりが所々にあって、うって変わって晴天の今、日射しを受けてキラキラしていた。