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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第4章 発芽
「わたしは…っ…ただ、あそこに煙草が」
「タバコ?」
「煙草が落ちていたから…!!」
煙草
そうだ
水溜まりの横に捨てられていた吸い殻を見付けたから、不審に思った花菜は声が聞こえるほうに近付いたのだ。
「タバコがどうって? 意味わかんねぇ奴だな」
しかしそれを問い正された男子生徒の反応は微妙である。
だからどうした、と言わんばかりの顔をされる。
それを見て、花菜を襲っていた羞恥と恐怖に…苛立ちが混ざった。
“ やっぱりこの人達も卑怯者だ ”
怖い、厭らしい、嫌い
こういう人間が、本当に嫌い
「──吸った犯人は、あなたでしょう?」
「はぁ? 犯人?」
「わたしたちまだ未成年なのに…!! ここ、学校なのに…っ……す、吸ったら、駄目だと思う」
彼等が脱いで投げているブレザーの横には煙草の箱がある。
そこ一帯に散乱する吸い殻も、何よりの証拠だ。
「先生に知られたら──ッ」
「なにお前、チクる気か?」
「…っ」
恐怖に負けまいと声を絞り出して注意すると、最後まで言い終えないところで腕を掴まれた。