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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第5章 狼の本性
だってどう説明すればいいのやら。
良いことではないし、かと言って悪いことだったのか…。
彼女自身がその気持ちに整理をつけていないからだ。
「料理してるうちに楽しくなったのかも…」
「…ハハっ、本当に? 花菜は単純だなぁ」
こういう時…いつもの花菜なら必ず伊月に相談していた。
知らないことや不安なことは全て伊月に聞く。そうすれば正解を教えてくれる。それが彼女の信じる道だ。
だが何故か、今の花菜は
伊月にだけは今朝のことを相談してはいけないと…
不思議なことに、思ってしまった。
だから下手な嘘で取りつくろい、作り笑いを貼り付けた。
「…まぁ、花菜が昨日のことを引きずっていないようで、ひとまず安心かな」
その口許の不自然さを、伊月はひと目で見抜いてしまえるのに──。
「そうそう、初手料理のお祝い──…ってわけじゃないけど、花菜にこれをあげるよ」
伊月はそれ以上の詮索をやめ
食卓に流れたおかしな空気を断ち切るように、鞄から取り出したある物を花菜に差し出した。