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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第5章 狼の本性
「なに? これ」
「髪飾り」
「うわぁ…。可愛い…!」
花菜に差し出されたのは赤い円形のアクセサリー。
円の縁は銅色で、同じく銅色の魔女のシルエットが円の中に小さく収まっている。
よくよく見ると、赤色を背景に、その魔女はホウキに乗っていた。
「大学の友達が──別の学部の奴なんだけど、そいつがデザインした試作品なんだ。妹がいることを話したら譲ってくれたよ」
「じゃあ……世界にこれ一個だけ?」
「そうなるね」
「すごい!」
箸を置いた花菜が受けとるより先に、伊月はそれを彼女の前髪に付けた。
パチンとピンを止める。
まるで一輪の花を挿したかのように、彼女の黒髪にパッと赤色が映えた。
「やっぱり……似合ってる」
「嬉しい」
「せっかくだから使ってよ」
「使う! 毎日付ける」
食事中にも関わらず、花菜は立ち上がって手鏡を探しだす。
落ち着きのない彼女の様子を観察しながら、伊月は意味深な笑みを口の端に浮かべていた──。