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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第5章 狼の本性


──…


翌週の金曜日。

花菜が赤い髪飾りを付けて登校するようになり、一週間以上が経っている日。

“ …ッ…、今の人…──!? ”

午後の教室に移動中の彼女は、校舎の廊下である男とすれ違った。

一度すれ違ってから振り返ると──

相手は歩くペースがゆっくりだったから、まだ近くにいた。

「……あ」

思わず肩に手を置いて呼び止めたくなるも、教科書と筆箱で花菜の両手はふさがっている。

だから…二度、三度と、喉の中を行き来しては奥に戻ってしまう名前を


「ふ…─ッ…、不破……せん、ぱい」


躊躇い(タメライ)がちにではあるが、彼の背中に投げかけたのだ。


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