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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第5章 狼の本性

「──…?」
「不破( フワ )先輩ですよね…!?」
投げかけられた相手はピタリと足を止めた。
だがそのまま動いてくれない。
花菜が呼び掛けを繰り返すと、聞き間違いでないと気付いたみたいでようやく彼は振り向いた。
「俺を呼んだのか」
「…っ、そ、そうです」
「お前……」
振り向いた彼は眉を潜める。
それも当然の反応で、彼は花菜の友人でも同級生でもなく、ぎりぎり……知り合いと呼べるのかさえも疑わしい関係。
「お前は先週の?」
「はい、あの、鈴村花菜と言います」
明るいグレーに染めた髪。片耳ピアス。
ブレザーの下に着ているのは規定のYシャツでなくて、何故か黒のTシャツだ。
シャツの第一ボタンはおろかブレザーさえもきっちり前を閉め、風紀新聞に模範として取り上げられてもおかしくない着こなしの花菜とは──つまり、真逆なのだ。
接点がある筈もないこの二人。
彼らが出会ったのは、まさしく先週の、屋上でのことである。

