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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第5章 狼の本性

花菜にとって、どういうわけか忘れられない男。
「この前のお礼を言わせてください。この前…その、屋上で」
彼女がもごもごと話し出した内容は、またいつか会えた時に言おう言おうと温めていたものだ。
「わたしがあの人を怒らせて殴られそうになっていたのを、不破先輩が、止めてくれました…っ」
だが、いざ目の前にすると上手く言葉が出てきてくれない。
そんな花菜を不審がる不破( フワ )だが、彼女が言い終わるまで待ってやっていた。
そして──最後まで聞いたそのうえで
彼女を冷たく突き放す。
「──…用はそれだけか?」
「え…」
「俺はべつに止めたつもりはないしお前を助けたつもりもない。だから礼もいらない」
愛想のない話し方。
「どっか行けよ」
「……!!」
こんな返答をされるだなんて想像もしていなかった花菜があまりの驚きに言葉を失っていても、そんな事に構いやしない。

