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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第5章 狼の本性

「おい」

「──はい!」

「…。どうして後ろを歩く……」

「ご、めんなさいっ」

その不自然さにやっと気付いた不破が、急に立ち止まった。

それは校門を出てからしばらく歩き、二つ目の横断歩道を渡った時だった。

すぐに花菜が駆け寄る。

もちろん近付きすぎない程度だが…彼の真横に並んだ。

「速いのか」

「え?」

「俺が歩くスピードだ」

「……! そんなことはないです」

いったん本から目を離した不破は、隣にきた花菜に向かってぶっきらぼうに聞いてくる。

不破は伊月ほど背が高くないけれど、花菜が小柄なぶん身長差は大きくて…

多少、威圧的になるのは仕方がない。


だがその圧力をふまえてみても、少しの気配りを感じさせる問いかけに花菜は驚いた。

“ なんだろう、この人…… ”

凄く無口で怖いんだけど、それだけじゃないような…。

それが不思議と嬉しかった。

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